開店に備え水撒きに余念のないオーナー
この店は個人の住宅を改装したもので、店内に入ると庭の景色を楽しめるように工夫されている
上乃裏(かみのうら)通りは、熊本市の中心商店街上通りから東へ約100m離れた所、国道3号線と上通りアーケードに挟まれた「裏通り」「路地裏」と言っていい位置にある。
唐突ですが⇒地図
町屋・空家再生の経緯とカリスマ山野潤一氏については、
9月18日ログで館長が記述しているので割愛する。
この一帯の再生を半年ほど前、NHKの「ビジネス未来人」が紹介している。空家、廃業した店舗に新たなビジネスチャンスを求める若きチャレンジャーが、工務店を営む異端の都市デザイナー山野潤一と出会い、見棄てられた空間を再生し、自らもオーナーとして興きる過程を追った番組だった。
その中でカリスマは、若者の資金・運営方針などに対するアドバイスに至るまで徹底するコンサルの手腕も見せている。
再生された10店舗ほどを見た。
隣家との壁面はブリキ板、入り口ですら素人が板切れを無造作に打ち付けたかのような店舗すらあるが、オーナーそれぞれが、その時できる範囲で施した工夫が満ちている。
その稚拙・不揃い、無国籍を思わせる混濁は決して不快・不安なものではなく、狭い通りと相俟って、人の声が優しく響く世間に思える。
透明に近い明るさの中の心地悪さ、原色が我も我もと叫ぶが如くの喧騒を想う時、地方都市はこれで良いのではないかとさえ感じさせられる。
5感が快く伝わるような混濁。
釣れない釣師は「ササ濁り」という言葉を思い浮かべた。
やっぱり脱線したか。場所を選ばず脱線した。
各所で廃材物の利用が目につく。それらは番組中でも取り上げられていたが、カリスマが集積していた家具、什器はおろか、建築廃材等の流用であろう。
ある物は道路工事の際に使われる厚さ1cmもの板材。曲げ、ひねりなどの意匠がこらされ店舗前面を占め、薄い鉄板は精細なドクロとしてウッドデッキの擬宝殊(ぎぼし)?となっている。
ガソリンスタンドで目にするフィラー(スタンドマンが車の給油口に差し込むアレ)をドアの取っ手にしている店まであった。
ガラクタを上手く活かすコンセプトと、それを形にする多種多様な「町中の技術者」の参集によるものに違いない。
多くの地域で、自らが生まれ育った町さえもが使い捨てられようとしている。
しかしここでは、時代に取り残され風化を待つ、町という共有財産に新しい命が吹き込まれている。
様々な意向に安易に流されない、確たるリーダーシップと若い力が醸す統一感がそれを支えている。
その源はこの通りの歴史であり、周囲の環境と人との関わりの間で求められた調和なのかも知れない。
<ゆっつら〜と館 T>
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